昔、15年くらい前らしいのですが、大きな施設の歯医者さんで数百万円かけて、精密な義歯を作ったご婦人が困っていらっしゃいました。
上の歯を全て精密義歯にしていました。
大きな歯科病院では、勤務医が退職すると追いかけることが難しいのです。
個人の歯科医院で院長に師事するのと違っていて、技術の継承が保たれて居なかったりします。
ご婦人は、壊れかけた入れ歯の修理に何回か通いましたが、作ってくれた歯医者さんはもう居ません。
残念ながら、修理の技術が継承されて居ませんでした。
今どきは、インプラントですよ。。。。。と、勧められたそうですが、その気にはなれませんでした。
来院されて、
「コレ治せますか?ダメなんでしょ?何回やってもダメなんですけど・・やっぱりダメでしょ?」
診せていただくと、それは、少し壊れて居ましたがはまりますから、お口に収まります。
ところが、噛むと落ちてきます。
二つのことが起きていました。
一つは、下の奥歯に入れ歯をしていなかったこと。
これで、シーソー状態になり、噛めば上の入れ歯をゆすり落とします。
二つ目は、精密義歯の支えが2か所壊れて、1本の歯が今にも抜け落ちそうになっていること。
修理は可能ですが、少し手遅れぎみで、費用も時間もかかります。
精密義歯は、専門性が必要なので、誰でも作れるわけでは無くて、治すのも技術が必要です。
もしも、快適な義歯に出会ったなら、その出会いは貴重です。
作ってくれた歯医者さんとは、連絡を途切れてしまわないようにメンテナンスするのが、長く快適に使うコツです。
これから入れ歯の人の数はますます減っていきます。
虫歯や歯周病で歯を失う心配がなくなりつつあるからです。
反面。
入れ歯の技術は貴重になります。
熟練するチャンスが減るからです。
入れ歯は保険で良い・・・との声を良くききますが。
丁寧に作った入れ歯は高価で、貴重品です。
実は、そんな丁寧に作った入れ歯と出会ったことが無い人が大半なのです。
一度体験され、違いを実感していただくと、技術者を探し歩いたご婦人の気持ちがお分かりいただけるかと思います。